TOBE広報 webマガジン
vol.15

2024年9月

小さい頃に多くの経験を積み重ねることが将来につながる

先生は小さい頃、運動が苦手だったそうですが、苦手なのに「体育」を指導するようになったきっかけは。

小学生の頃は背が小さく、体重も重くて、それが原因で運動ができないんだと思っていました。ところが、背が小さくても足が速い子や、ぽっちゃりさんでもいろいろなことを器用にできる子がいる。友達と遊ぶ中で運動が苦手な理由が“体格”だけじゃないんだろうと思うように。それに運動は苦手でしたが嫌いではなかった。走ることや球技は苦手でも泳ぐことだけはできた。それが自信につながり運動をずっと嫌いにならなかったのが、今に至っている理由の一つかもしれません。

ずっと逆上がりができなかったとのこと。

23歳にして逆上がりができるという経験をしました。大学院では器械運動の指導法を教わり、自分のサイズに合う鉄棒で練習できました。後から思うと、逆上がりができるための経験が積み重なり、23歳でようやくできるタイミングになったんだなと。体育を学ぶ中でわかったことは、できるできないも大事ですが、やったかやらないかがもっと大事だということ。小さい頃に多くの経験をしておくと必要なときに突如できるようになることを学びました。

“できない”を共有し笑いが生まれる

運動が苦手な学生にも楽しんでもらうために、授業で工夫していることは。

“普段やらない動き”を取り入れています。例えば、準備運動では足の小指側で立ち、そこから膝を曲げて屈伸をしたりします。普段使っていない使い方をすると体の使い方がわかってきます。さらに、みんなで初めてのことをやったらみんなで“できないを共有できる”。できなくて起きる笑いがたくさん起きれば楽しい雰囲気が生まれますしね。授業では運動は“コミュニケーションの手段”であると伝え、上手い下手ではなく、運動を通じて他の受講生とどう関わろうとしているかを大切にしています。

子どもが「体育」や「体の動かし方」を経験することで、育まれる力とは。

体は一番身近な道具で、それを上手く使って得る成功体験は、いろいろな場面で生きてきますし、コミュニケーションの手段として多くの人と関わることができます。運動能力は実は“遺伝”ではなく“遺伝的要因”。遺伝的要因とは生まれてからそこに至るまでの生活の中で、どれくらい経験したかということ。ですから、子どもに経験をどれだけ提供できるかが大きい。放っておいても遊び相手がいた昔と違い、今は親が子どもに関わらないとその経験ができません。そうした現状を教員としてしっかり伝えていきたいですね。

山形市球技場で行われている
「はだしで外遊び教室」では講師も務める

東北文教大学 人間科学部 子ども教育学科 准教授。東北学院大学 大学院 人間情報学研究科博士課程後期単位取得退学。小学校教諭を目指す学生への「体育の指導法の科目」や、保育者志望の学生への「遊びや身体の動かし方についての科目」などを担当。付属幼稚園の運動教室でも指導を行っている。