2017年12月
高齢者独自のケアの重要性
先生のご専門である「老年看護学」と「終末期看護学」とは何ですか?
生まれてから亡くなるまで、人のライフサイクルは8つの発達段階に分けられるのですが、老年期とはその最終段階に位置づけられる時期のことです。その中でも、近い将来の死が不可避となった状態のことを終末期と呼びます。高齢者の身体はいったん機能が低下すると回復が難しく、急激な状態変化につながる場合も少なくないため、成人とは異なる看護が必要とされます。高齢者の日常生活の質を確保し、最終的にはその方にとって望ましい〝看取り〟を実現する。そうした一連のケアの在り方を考える学問分野になります。
どのようなきっかけで学ぶようになったのですか?
医療技術が発達していなかった昔は自宅で死を自然に受け入れ、家族で見送るのが一般的なことでした。ところが医療が進歩するにつれ老衰という自然の成り行きに逆らい、死を先延ばしするようになったのです。私が介護施設で働いていた当時は、施設で高齢者を看取るということに関して明確なガイドラインがまだ整備されておらず、病院における延命優先の終末期医療をそのまま転用しているのが実情でした。老衰による死が近づいている人に対して無理な延命を行うことに大きな疑問を抱き、施設に入居する高齢者には独自の視点でのケアが必要だと強く感じたことがきっかけです。
誰もが向き合うべきテーマ
私たちのように、介護福祉の仕事を目指す人に習得が必要な知識なのでしょうか?
死についてきちんと考えることが、その死に向かって自分がどのように生きていくかの道しるべをつくることに繋がります。そうした意味では、介護福祉に関わる人に限らず誰にとっても身近であり、若く健康なうちから向き合っておくべきテーマだと思います。
確かにそうですね。最後に、先生はこの学問のどんなところに意義ややりがいを見出してきましたか?
一つは、高齢者が自らの人生に満足して幕を閉じることができるかどうかが、ケアの担い手に委ねられているという職責の大きさがあります。さらに、高齢者の最も身近な存在として日々想いを汲み取り、その人に寄り添うというケアスタッフの姿勢はとても尊いものです。ですから若い人にも介護福祉の仕事のやりがいに目を向け、高齢者ケアや終末期ケアについても深く知ってもらいたいと願っています。
東北文教大学短期大学部 人間福祉学科教授、学科長。宮城大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。看護学博士。社会福祉学士。山形大学医学部附属病院、特別養護老人ホーム勤務、山形県立保健医療大学看護学科 准教授などを経て、平成27年より現職。
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奥山 優佳
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