TOBE広報 webマガジン
vol.8

2021年3月
私がインタビューしました! 子ども教育学科/4年 五十嵐 美輝さん(山形県立寒河江高等学校 出身)

安全・手軽な実験教材を開発子どもに「目で見て納得」の機会を

先生が前任地の山形大学在職中に開発し、現在も実験教材として配布されている「麦芽糖試験紙」とはどんなものですか。

麦芽糖試験紙は、唾液の働きを調べる実験でデンプンが分解してできた糖(主に麦芽糖)の検出をリトマス試験紙の感覚で簡単に検出できるように開発したものです。火を使わずに安全・手軽に実験ができることから毎年全国の小・中学校から引き合いが多くあります。

さらに「ショ糖試験紙」も先生が開発されたんですよね。

植物は光合成をするとデンプンを作り、その後水にとける物質「ショ糖」になって葉から根や茎へと運ばれます。デンプンの検出は簡単にできますが、「デンプンがショ糖へと変わったことを確かめる実験」は小・中学校の理科室では器具がないので不可能でした。それを簡単に実験できるように開発したのが「ショ糖試験紙」。頭の中だけの理解ではなく、実験を通して「目で見て」実感する機会に繋げてもらえていたら本望です。

定性的ではなく定量的な思考で「なぜ」の連鎖を大切に

苦手意識を持つ子どもも少なくない「理科」の科目。好きになってもらうためにどのような工夫が考えられるでしょうか。

今学習していることが日常的な現象とどう結びつくのか。その気づきや発見をいかに深められるかだと思います。例えば食物から吸収した栄養分は体の細胞で水と二酸化炭素に分解されますがこの時「酸素」が必要です。蝋燭や紙が燃える時にも「酸素」が必要ですよね。燃焼は物質がバラバラに分解されるということですから、体内で起こる分解と同様に酸素が必要なわけです。一見関連のないような事柄が実は繋がっています。総合的に捉えることで理科がもっと身近に感じられるかもしれませんよ。

将来小学校教師を目指す私たちが子どもに理科を教える際、特に大切にすべきことは何でしょうか。

当たりまえのことですが、教師は自分がわかっていることをわからない子どもたちに教えるわけです。わからないという地点から一緒にスタートし、一つひとつ丁寧かつ論理的に進めていくことが必要です。その時に大事なのは、“定性的”ではなく、“定量的”に考察を進めること。そうすることで自然の事象や性質にひそんでいるさまざまな規則性を子どもたち自身が見つけ、考えてもらいやすくなるからです。そこからたくさんの「なぜ」が生まれ、やがて一つの「なぜ」が他の「なぜ」に繋がっていく。その面白さを、ぜひあなたたちから子どもたちへ伝えていってほしいですね。

東北文教大学人間科学部 子ども教育学科 教授、学科長。山形大学名誉教授。筑波大学大学院博士課程修了。専門分野は理科教育学、植物生理学。研究課題に「理科教育の生物分野における実験系の開発研究」「植物の環境応答におけるシグナル伝達機構の解析」等がある。主な授業科目に「生物学の探究」「理科教育法A・B」「環境と生物を考える」など。