TOBE広報 webマガジン
vol.9

2021年9月

高齢化や生活の多様化に伴い必要性が高まるソーシャルワーク

先生のご専門の一つである「ソーシャルワーク」とはどのようなものですか。

社会生活の中で課題を抱える人に対して、周囲や地域の人々との連携や調整を図り、必要な社会福祉サービスを組み合わせることにより問題の解決に取り組むことを指します。「ソーシャルワーカー」は、一般的には社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を持ちソーシャルワークを実践する専門職のこと。介護施設に勤務する生活相談員のほか、自治体の委託や社会福祉協議会に所属するコミュニティソーシャルワーカーや、病院に勤務する医療ソーシャルワーカーなどがあります。年々活躍の場が広がり、期待される役割も大きくなっています。

ソーシャルワークを研究するようになったきっかけは。

初めて学んだのは、福祉教育を専攻していた大学時代でした。そして卒業後は介護施設に勤務しながら、認知症について研究するように。そこで気づいたのは、周囲の環境が認知症ご本人に与える影響の大きさでした。周囲の対応次第で、ご本人がストレスを感じることなく、認知症の進行をも抑えることもできる。そのように周囲と連携し環境を整えることは、つまりはソーシャルワークに通じること。認知症についての研究が、ソーシャルワークの有益性を再確認するきっかけにもなりました。

チーム対応により課題を解決。そこから生まれる達成感と喜び

先生はソーシャルワーカーの勤務経験がおありですよね。仕事のやりがいは何ですか。

ひと言で言うと「ご本人の生活の質が向上」した時の達成感と喜びでしょうか。これは多くの場合、関係機関や他職種とのチーム対応をなくしては成しえないこと。人の生活は変化するものですので、一度課題を解決できたとしてもまた新たな課題に対処しなければならない難しさがありますが、その都度周囲とよい連携をとれた時、そこにやりがいが生まれます。

ソーシャルワークを学び身に付けた力を、私たち学生にはどのように役立ててほしいと思われますか。

かつて社会福祉は、高齢者や障がい者など支援を必要とする方々を対象とした“限定的社会福祉”の考え方が主流でした。しかし近年は全ての人を対象とする“普遍的社会福祉”の時代に移行しつつあると認識しています。ソーシャルワークも、専門領域や仕事の場面に限った特別なものではなく、日常生活を円滑に営むためにも発揮できる機能です。ソーシャルワークは対人援助ではありますが、自身の人生を豊かにするためにもぜひ役立ててほしいですね。

東北文教大学 人間科学部 人間関係学科 講師。東北福祉大学通信制大学院修士課程修了。社会福祉法人やまがた市民福祉会で相談員として勤務。グループホームの管理者、特別養護老人ホームの施設長などを務める。2010年に東北文教大学短期大学部 人間福祉学科 非常勤講師に就任。2021年4月より現職。専門分野は社会福祉学。