TOBE広報 webマガジン
vol.18

2026年3月

パーソナリティの分類法「Big Five」は言葉が源流

先生のご専門である「パーソナリティ心理学」とは、どんな学問ですか。

パーソナリティは、「性格」や「人格」と訳されます。私たちは日常の中で、「あの人は優しい」「まじめ」「おとなしい」といった言葉を自然に使っていますが、そもそも人の性格にはどのような側面があり、いくつくらいの側面に分けて考えられるのでしょうか。その構造を明らかにしようとするのが、この分野の大きなテーマの1つです。小説やアニメでも、登場人物の性格設定は物語の魅力を左右しますし、人と人との相性や関係性にも、性格は深く関わっています。そうしたパーソナリティを表す「言葉」に注目し、人の性格がどのような構造を持っているのかを研究しています。

性格を「言葉」から研究するとは、どのような方法なのでしょうか。

言葉に注目して性格を捉える研究は「語彙研究」と呼ばれ、19世紀後半、イギリスの学者フランシス・ゴルトンが、人の性格を区別する重要な特徴は言葉に表れると考えたことが出発点です。辞書にある性格語を集め、そのまとまり方から性格構造を探ります。この流れの中で提唱されたのが、性格を外向性・協調性・勤勉性・神経症傾向・開放性の5次元で捉える「Big Five」モデルです。現在では30以上の言語で研究されていますが、近年は、言語によってはこの5次元だけでは捉えきれない可能性も指摘されています。私自身も、国語辞典を1ページずつめくりながら、性格を表す言葉を拾い上げてきました。使う辞書や、誰がどんな基準で集めるかによって、集まる語は少しずつ異なるため、「これが正解」と言えるものがあるわけではありません。ただ、そうした試行錯誤を重ねる中で、「おそらくこのあたりが、人の性格を捉える上で最もらしい構造なのだろう」という輪郭が、少しずつ見えてくるのです。

幼児期から思春期の性格構造変化の解明を目指す

現在取り組まれている「子どもの性格を表現する言葉」の研究について教えてください。

成人を対象とした研究がひと区切りし、次のテーマを考えたとき、子どものパーソナリティ研究が少ないことに気づきました。特に、幼児期から思春期にかけて、性格の構造がどのように変化して成人の5次元に行きつくのかは、ほとんど分かっていません。私は、その「途中経過」を明らかにしたいと考えています。現在は、3歳・小学1年生・4年生・中学1年生の保護者の方々に、学生と手分けしてインタビューを行い「子どもの性格をどのような言葉で捉えているか」を調べています。子どもが小さいほど、一言で性格を表すのではなく、具体的な行動やエピソードとして語られる点が印象的です。この研究は、子どもそのものというより、子どもを見る私たち大人の視点を明らかにする試みで、引いては自分自身の理解にもつながります。研究がどのように社会に活かされるかは、正直まだ分かりません。ただ、自分が「知りたい」と思う問いに向き合い続けることが、研究の原動力だと考えています。誰かがこの研究を手に取り、活用してくれたなら、それ以上に幸せなことはありません。

東北文教大学 人間科学部 人間関係学科 准教授。博士(文学)。早稲田大学大学院文学研究科修士課程・博士課程修了。専門分野はパーソナリティ心理学。現在は「学齢期前の子どものパーソナリティ特性の発達研究」に取り組んでいる。